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株式会社ファンケル様

永坂 順二氏
株式会社ファンケル
カスタマーサービスユニット
物流推進グループ
グループマネージャー
永坂 順二氏

鮮度管理の徹底と出荷効率化を実現―新物流センター稼働による顧客と商品の新しいつながり

株式会社ファンケルは、化粧品を中心としてサプリメント・発芽玄米・青汁・肌着といった、美と健康にこだわった商品を販売している。より良い商品の開発、より手に取ってもらいやすい販売網の開拓に力を入れ、いまでは海外でも人気ブランドとして名を馳せている。同社は2008年、顧客により早く正確に商品を届けるため、関東に点在していた物流拠点を集約した新しい物流センターをオープンした。RFIDの活用と高度な情報化により、極限まで自動化されたシステムで、スピーディな出荷と商品の完全な鮮度管理を実現しようとしている。

プロフィール

株式会社ファンケル

  • 所在地:神奈川県横浜市中区山下町89-1
  • 設立:1981年
  • 資本金:107億9,500万円(2008年3月31日付)

商品開発、販売チャネル開拓による流通ルートの増加、物流拠点の点在が課題に

 株式会社ファンケルは1980年に無添加化粧品の通販会社としてスタートしました。当時はまだ少なかった無添加化粧品を開発・販売し、やがては手軽に利用できるサプリメント、発芽玄米や青汁などの健康食品分野にも進出。現在では肌着や雑貨にまでラインナップを広げています。商品開発と並んでファンケルが注力してきたのは販売チャネルの展開です。直営店のファンケルハウスを全国に200店舗近く展開するほか、ドラッグストア・スーパーマーケットなどの一般流通や、自社で流通ルートを持っているコンビニの販売網に向けた卸売りも行います。海外にも販売拠点を設け、積極的に輸出も行っています。

新物流センター稼働による顧客と商品の新しいつながり―株式会社ファンケル
株式会社ファンケル

 商品開発と販売チャネルの拡大に合わせて物流センターも拡張。通販、直営店舗、流通、海外の4つの販売チャネルに対し、関東だけで8つの物流拠点を持つに至りました。当時の状況をカスタマーサービスユニット 物流推進グループの永坂順二氏は次のように語ります。

 「急激な展開にその時々で対応してきたため、物流センターが点在してしまいましたが、全体の効率を考える余裕は正直ありませんでした」(永坂氏)。

 拠点が増えるにしたがい問題となったのが、商品の鮮度管理でした。複数の流通ルートがあると、ルートごとに手にする商品の鮮度が異なる可能性があります。商品によっても物流センターは異なり、まとめて注文した商品が別々に配達されるケースもありました。また、物流センター間の横持ち輸送が必要で効率が悪いこと、それぞれのセンターで在庫を持つため無駄が多いことも課題でした。

鮮度管理徹底のためRFIDを用いたWMS構築へ

店舗・流通・海外出荷ライン用のRFIDタグ
店舗・流通・海外出荷ライン用のRFIDタグには注文店や商品情報が書き込まれている。タグはリライタブルで何度も書き直せる

 2006年3月、物流システムの抜本的な再構築がスタートしました。目的は顧客への「不の解消」とサービスレベルの向上、そして鮮度管理を徹底することでした。

 「商品の鮮度管理徹底、1注文1配送などの顧客メリットを考えると、物流センターを整理統合し、ファンケルの物流基盤の再構築が必要でした。難しいチャレンジなのはわかっていましたが、顧客メリットを第一に。これがプロジェクトの大命題で、そこからはじめることにしました」(永坂氏)。

 具体的には関東各地に点在した8拠点の物流センターの、1拠点への集約です。くわえて社内にもメリットがあること、コストメリットも得られること、そして環境にも優しい物流センターを目指すことが目標に掲げられました。従来の物流センターでは、注文された商品を1つのバケットに収めるピッキング作業のために、収めるべき商品が書かれたピッキングリストを印刷していました。年間で数百万枚にのぼるピッキングリストを廃止できれば、環境負荷を下げられます。その手段としてバーコードが検討されました。しかし、確実なバーコードの読み取りには集品バケットの移動スピードを低く制限する必要がありました。

 「最終的にはRFID(無線ICタグ)を採用しました。RFIDならコンベアを高速に動かしても確実に読み取ることができ、求める処理能力が得られることがわかりました」(永坂氏)。

株式会社ファンケル システム・業務改革ユニット 事業サポートシステムグループ 髙橋 和夫 氏
株式会社ファンケル
システム・業務改革ユニット
事業サポートシステムグループ
髙橋 和夫氏

 新物流センターのイメージを固める一方で、パートナーの選定も不可欠です。WMS(倉庫管理システム)構築で重視されたのは、システムの安定稼働でした。要望を受けたNECがNECソフトとともに提案したのはWMSパッケージ「EXPLANNER/Lg」をベースにカスタマイズすることでした。パッケージであれば基本的な安定性に不安はありません。追加したい機能部分のカスタマイズに専念できるうえ、機能テストの工数も削減できます。システム・業務改革ユニット事業サポートシステムグループの髙橋和夫氏は次のように語ります。

 「センター立ち上げまでの期間が短かったこともあり、パッケージであれば安定動作についてはリスクヘッジできると判断し、NECソフトにお願いすることにしました」(髙橋氏)。

 こうしてファンケル、マテリアルハンドリング担当のダイフク、物流センター運営担当の日立物流、そしてNECグループの合同プロジェクト体制が整いました。

最も現場に負担をかけない出荷業務100%の自動化を目指してWMS構築

倉庫管理システムを通じて作業要件をRFIDタグに書き込む
倉庫管理システムを通じて作業要件をRFIDタグに書き込むと、約160本のアンテナが情報を読み取り、集品バケットを制御し自動で各ラインへ誘導していく

 プロジェクトは4社が意思統一を図り、一丸となってファンケルの思想や事業への取組み姿勢を理解するところからスタートしました。顧客に最大のメリットを届けるという思いを共有し、一心同体となって物流センター構築へと進んでいったのです。具体的な要件定義に至るまで、毎週2回のミーティングのほか、ファンケルの研修センターで泊まりがけの「合宿」も10回近く行われました。

 「具体的な要件の中で最も悩んだのは商品の鮮度管理についてでした」(永坂氏)。

 通販の出荷ラインが2ラインと店舗・流通・海外向けの出荷ラインがありますが、完全な先入れ先出しを実現しなければなりません。完全なロット管理をするため、入庫の段階で各商品の箱には管理する情報を付加したバーコード表記を生産工場にお願いし、鮮度管理の難しい商品はケース自動倉庫で管理することになりました。また、ケース自動倉庫を設置すれば、通販ラインへの商品補充も自動化できます。従来の通販の物流センターでは商品補充だけのために7〜8人の人員が必要だったうえ、的確な商品補充ができず出荷作業が滞ることも。商品補充が自動化されれば、その課題も解決できます。

 「ケース自動倉庫の導入により商品補充のための人件費は削減できますが、それだけではケース自動倉庫のコストには見合いません。それでも完全な鮮度管理のために、ここはコストをかけてでもケース自動倉庫を導入するという結論に至りました」(永坂氏)。

 新物流センター構築にあたり、定量的な目標も立てられました。1つは発送のスピードの向上です。これまでピーク時には数日かかることもありましたが、持ち越しのない発送を目指すことにしました。もう1つは誤発送率の低下。当時の誤発送率は約0.04%と、通販業界としては高い値でした。それを0.005%にまで下げようと決めました。この2つを実現するために採用されたのが、DPS(デジタルピッキングシステム)とPOS検品の仕組みです。

 DPSとは、各商品の並ぶ棚にデジタル表示機を設置し、この表示機によってバケットに収める商品と個数を知らせる仕組みです。ピッキングリストが不要なほか、初心者でもミスなく素早いピッキングができます。POS検品はバケットに正しい商品が正しい数だけ詰められているかを、POSによって検品する仕組みです。さらに、WMSが基幹システムと連携して受注データを自動的に同期・更新できることも求められました。しかし、物流センターの要件定義が、基幹システムの更新の時期と重なり、当時はその構築中の段階でした。連携のための要件調整は、ぎりぎりまで苦労したそうです。

コスト削減効果は約2億円―顧客にも多大なメリットを

 新物流センターが千葉県柏市にオープンしたのは2008年8月でした。通販商品を受注頻度によって別ラインに分けるなど、蓄積されたノウハウがセンター全体に活かされています。属人的だったノウハウがシステム側に吸収されたことで、従業員の熟練度に依存しない効率的な出荷が実現しました。総延長2800メートルのコンベアをRFID付きのバケットが自動的に走り回る姿は圧巻です。その流れはWMSで管理され、空の状態から検品ラインに届くまで人手を借りることなく流れます。複雑なシステムですが、稼働開始から1日も止まることなく順調に出荷が続いています。こうした自動化により、年間約2億円のコスト削減が見込まれています。

 新物流センターの完成で最も大きなメリットを得たのは、もちろん通販を利用する顧客です。RFIDとDPSによる出荷スピードアップにより、以前は15時半までだった当日出荷の注文受付リミットは17時半まで延長。受注ピーク時でも翌日以降に出荷が持ち越されることはありません。1か所に集約したことで、冷凍商品など一部の商品を除き、ほとんどの商品を1梱包もしくは同時にお届けできます。

 「新物流センターの処理能力は1日あたり約3万〜4万件になります。いただいた注文の91%は当日に出荷されます。残る9%の大半はWebなどの夜間注文分ですから、当日出荷率は現時点で考えられる最高水準だと思います」(永坂氏)。

 新しい物流センターの先進機能は業界にも知れ渡り、他社からの見学依頼も絶えません。

 「いいと思うところはどんどん真似をしてもらって、業界全体でコストダウンしたり、新しい手法を編み出したりしていければいいと思います。『システムは共同で、競争は店頭で』がモットーです」(髙橋氏)。 

 他社の模範となる物流センターを設置したファンケルですが、これは完成形ではありません。まだ従来の手法で対応し続けているセンターや、システム化が難しい冷凍倉庫などが残っています。今回の成果を横展開していくのが今後の課題だといえます。

 「さらにその先の課題として、1か所に集約することのリスクも考え、何らかのリスクヘッジの手段も考えていくつもりです。RFIDについても、さらに進んだ活用方法を模索していきたいですね」(永坂氏)。

 物流の仕組みを改善し、顧客に新鮮かつ安全な商品を届けたい。永坂氏、髙橋氏の熱意は、顧客視点で安全、安心を追求するファンケルの理念そのものです。この目標がある限り、ファンケルの挑戦と成長は続きそうです。

ファンケル関東物流センターの概要
ファンケル関東物流センターの概要

すべてのバケットの作業情報が集約された倉庫管理システム
倉庫管理システムにはすべてのバケットの作業情報が集約され、確認できるようになっている

1時間に約650ケースの入出庫が可能なケース自動倉庫
ケース自動倉庫では4台のクレーンによって、1時間に約650ケースの入出庫が可能

システム担当より

伊藤 雅次

NECソフト
ニューソリューション事業部
WMS ソリューショングループ
WMS エキスパート
伊藤 雅次

パートナー企業と合同で1年半以上にわたって1つのプロジェクトに取り組み、総合的な物づくりを体感できるスケールの大きな案件でした。顧客に良い物を素早く確実に届けたいというファンケル様の熱意を肌で感じながら、ともに物流を進化させていくことは、私自身の勉強にもなりました。この貴重な経験を活かして、今後も流通事業をサポートしていければと思っています。

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